(1)前年度に引き続きマイクロフィルムによる『贅語』天地帙・身生帙関係稿本間(14点)の異同の照合、比較・検討を行った。殊に改稿の甚だしい身生帙の稿本の比較には手間どり、残念ながら完全にすべてを行うには到らなかった。 (2)国会図書館、東大図書館、順天堂図書館、大阪府立図書館など東京、京阪神の各図書館で、梅園が参照したことが判明している科学・医学関係書、あるいは参照したであろう同時代の書または古典を調査し、一部複写にて収集した。 (3)梅園の読書ノートたる「浦子手記」は、彼がどの書を参考としたか、また該当書のどの部分に注目したかを知る重要な文献であるが、なにぶん67冊と膨大で、これまで約半分程度を読了・解読するに終わった。残余の読解は、今後の課題である。 (4)「浦子手記」には参照した書物の表題は記されているが、それが当該書のどの部分かを明示していない場合がある。これを原テクストと照合して確認を行うという新たな作業を要するが、一部これを行った。 (5)「浦子手記」によると、61歳の時のメモに、西川如見『華夷通商考』より外国国名を抜き書きしている。晩年まで、彼は外国への関心を失っていないことが判る。 (6)「浦子手記」には、鬼神・魄などに関するメモが散見されることより、今後彼の死生観、殊に死後の世界への観念の解明が重要で、新しい問題となろう。
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