研究概要 |
図像学上の写真資料の収集管理の方法については、西洋における伝統を誇る方法を研究し、その調査結果は、放送大学「美術史と美術理論」のテレビにおける放映、ならびに、市販されたビィデオという形で発表している。西洋における20世紀初頭以来の歴史的な展開を紹介し、一方で図像学研究への具体的な応用である、比較論、並びに、主題解読論を論じた。さらに、この研究の延長上で、美術史研究の世界で、特にアメリカを中心にインターネット上に様々な図像上のデータ・ベースの構築が試みられており、それが、わが国においても、自宅、研究室における研究のツールとして十分に使用可能な局面に突入している現状を確認できた。元来が、各美術館が所蔵している作品の写真資料が、現在は国際的な意味を持ったネットで公開されて来ている。この事実は、やはり「美術史と美術理論(印刷教材)」(改訂版、特に2刷)の紙上で取り上げ(Joconde,MNR,San Franciso Museum,他)、一部共同研究の形で具体的な方法の提示をした。 また、こうした資料を活用した個別の学術成果としては、宗教図像研究では、聖フランシスコ・ザビエル図像学を研究した。収集した写真資料の比較研究を行ない、特に、ル・クレール作の《インドにおける布教》についての、典拠、並びにその図像学を解明した。また一方では、ザビエルの肖像画の図像展開を調査し、肖像図像のカタログを作成し、また身ぶりの図像解釈上の問題を解明した。この研究に関連した成果としては、聖アウグスティヌスの図像を、〈燃える心臓〉を中心に分析した。他方で、平行して調査を行った西洋の古代史の図像研究としては、プッサン作《ファレリーの教師》についての図像と構図の成立過程を説明しえた。
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