研究概要 |
本研究は、対人関係に関する不確定状況の1つとして、囚人のディレンマや社会的ディレンマを含むN人対等ゲームの枠組みのゲーム状況を取り上げ、そのディレンマの特徴と選択反応としての意思決定ヒューリスティックスの関係をN人対等ゲームの観点から整理することを目的として、様々なゲーム状況における選択基準の整理分類を行った。ゲーム課題の質問紙として、2選択肢線形利得関数のN人対等ゲームΓLと2区間2選択肢区間内定値利得関数のゲームΓsのすべての基準ゲームそれぞれ39種類(1端点水準から4端点水準までのCC、CI、CD、II、DD、IDの各群の全ゲーム)合計78種類を具体的な得点で表現した利得表を提示した。また、ゲーム状況における参加プレイヤーの人数設定の硬化をみるために、N=3とN=11の2条件を設定した。結果は、(1)被験者の選択反応、(2)当該選択の難易度、(3)被験者自身が記述した選択理由、の3点に分けられ、ディレンマとコンフリクトに関係する意思決定ヒューリスティックスに関係する反応を中心に分析・整理した。本研究の特色は、限定した状況ではあるが,資源ディレンマのパラダイムによって代表される社会的ゲーム状況を含む全体的枠組みにおいて,これまで考慮の対象外とされてきた個人的意思決定ヒューリスティックスの構造を実証的に探るための基礎構造解析をおこなった点にある。資源ディレンマのパラダイムにおいて,集団の構成員は他の構成員と有限資源を共有しなければならないが,本研究では個々の意思決定が単なる数量的最大化ではなく,意思決定ヒューリスティックスの採用過程としてとらえるために必要な基礎的構造データを収集分析した。本研究の知見により、集団意思決定過程におけるヒューリスティックスの構造的分析が可能となった。
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