研究概要 |
視覚的注意の研究を行った.研究目的として,(I)ある刺激属性に選択的に注意を向けた場合の注意の空間的分布の測定,(II)注意の空間的分布の時間的変化の検討,(III)大きな視野での注意の空間的分布の測定,(IV)診断的指標としての注意の測定の有効性の検討を挙げた. 目的(I,II)に関しては8x8の格子の中に注意文字と非注意文字を配置したターゲット刺激を短時間提示して,プローブ位置での文字の存在と文字報告の正答率を測定した(プローブ再認課題).各格子位置での正答率を基にして等高線様の等正答率地図を描き,注意・非注意の空間的分布を作成しところ,中心部で高く周辺部で次第に低下する山型の分布が得られた.目的(III)については,大きな背景テクスチャーに埋め込まれたターゲットテクスチャーの検出実験を行った(テクスチャー分離課題).ターゲット位置ごとに検出率を求め,等高線様の等検出率地図を描いたところ,焦点的注意を必要とするテクスチャー分離条件で,中心視野よりもやや周辺視野で成績が高いという結果が得られた.目的(II)では,ひらがな9文字を3x3に配置した刺激画面を15種類作成し,次々と高速で提示した(高速系提示(RSVP)課題).緑色の文字の中にターゲットとして赤色文字を提示し,被験者に赤色文字の報告を要求した.報告文字がどの画面のどの位置に提示されていたか分析することにより,注意の時間的・空間的な分布の測定を目指した.目的(IV)では,RSVP課題の精神分裂患者への診断的応用の可能性を検討した.漢字熟語のRSVP課題を分裂病患者に課し,患者の病質との関連性を調べた.
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