研究概要 |
本研究課題においては,Macintosh社のPower Macintosh 9500/132システムを利用した高解像度のカラー・ディスプレイによる色覚実験装置を構成し,実験を行ってきた。この一連の装置は,視知覚の実験を容易に,かつ精密に行えるという点で画期的なものであり,第1章から第3章までに述べたような結果を得ることができた。すなわち,網膜上の様様な感度特性と中心視・周辺視および異方性の関係および網膜中の黄斑色素濃度との関連,色刺激に対する検出反応時間と中心視・周辺視および異方性の関係,周辺視における色覚モデルの構築などである。本研究によって得られた以上のような結果は,基礎研究上で有意義であるだけでなく,報告書中で詳細に述べたように,応用的にも大きな意味を有するものと考えられる。 これらの実験の遂行には適切な実験プログラムが不可欠であり,研究の成否は,いかにすぐれたコンピューター・プログラムを作成することができるかに大きく依存するといっても過言ではない。そのため,上述の実験を行うにあたり,プログラム作成とバグ除去等に膨大な時間と労力を費やすことを余儀なくされたという経過があった。 今後の研究課題としては,提示刺激の大きさを,さらに大脳皮質視覚領の拡大率(M scaling)を考慮した条件で検討すること,中心視の周辺視における,本研究ではとりあげなかった遂行課題による差異のあらわれ方をみること,中心視と周辺視における課題遂行の精度の比較に注目すること,等がある。
|