研究概要 |
本研究の目的は,「いのち」の観念の問題を「こころ」の観念と結びつけ,それらの観念とその発達を明らかにすることにあった。小学校2年生73名,4年生62名,6年生53名,中学校2年生45名,そして大学生82名,計315名に対して,大人の人間,赤ん坊,イヌ,バッタ,チューリップについて「いのちとこころの有無と在処」,「いのちとこころの関係」,「いのちとこころのイメージと観念」について質問をおこなった。 1.植物に命を認めた者が小2で約7割であった以外は,どの学年でもほとんどの者が5つの対象に命を認めた。また,大人の人間,赤ん坊,イヌに心を認めた者はどの学年でも7〜9割であるが,バッタと植物については4〜6割,とくに大学生では植物については約1/4と少なくなった。 2.命の在処を見ると,「心臓」が多く,ついで「体全体」と「胸」であった。植物については「根」と「全体」と多く見られた。また,中2以降,「体全体」を挙げる者が多くみられた。一方,心の在処を見ると,「心臓」「脳」「胸」「頭」に分散し,植物の場合には「花」が多く,ついで「根」や「全体」が見られた。また,中2以降,「脳」(ただし,植物については「全体」)を挙げる者がとくに多かった。 3.命がなくなれば心もなくなると考える者は約5〜6割(ただし,植物についてのみ3〜5割)であった。それに対して,命がなくなっても心はどこかに残るとした者は約1〜3割であった。 4.全体として小2と小4は命を重視し,中2以降では「どちらともいえない」が多くなる傾向が見られた。その判断の理由として,「命がなくなると死ぬ(心もなくなる)」「命(心)は大切」「命は体の一部,心は気持ち」,「心は思う・感じる・考えるから」「命がなくなっても心はあるから」などが多く挙げられた。 なお,「いのちとこころのイメージと観念」は自由記述の質問項目で,集計および分析の途中である。
|