研究概要 |
本研究では,個人内に複数の自己解釈図式に基づく複数のスキーマが桔抗状態で存在し,個人は状況刺激により活性化したいずれか単一のスキーマを基に社会的相互作用に臨むもの仮説し,これを支持する結果を得た。 1.内集団接触場面と外集団接触場面を区別して自己解釈図式を測定する尺度を作成し,独立的/相互依存的自己解釈図式の場面変動を吟味した。 (1)因子分析の結果,内集団場面,外集団場面とも相互依存的特性を反映する「他者への順応」「評価懸念」の2因子と,独立的特性を反映する「独断性」「自己信頼」の2因子を抽出した。 (2)予想通り,外集団場面より内集団場面において相互依存性得点の高い自己解釈図式が検出された。 (3)親密な対人関係とそれを取り巻く人間関係との葛藤場面において,相互依存性の高い群は周囲の人間関係からの要請に妥協し,独立性の高い群は自己の重視する対人関係の満足を優先する傾向が示唆された。 2.Cousins(1989)のTST(Twenty Statements Test)を大学生に実施し,自己解釈図式の類型間で自己記述を比較した。状況を限定しない場合は自己を社会的カテゴリーに即して言及し,特定状況では自己のネガティブな特性への言及が多かった。自己解釈図式の相互依存性高群は低群にくらべてポジティブな特性への言及率が大であった。大学生の自己記述の日米比較を行った結果,自己解釈図式の文化差を示唆する証拠を得た。 3.従来の尺度による自己の独立性・相互依存性の程度と,Witkin(1981)のいう認知スタイルの場依存性-場独立性との関連を,水平垂直知覚検査器(竹井機器(株),T.K.K.225)を用いて吟味し,両者間の弱い関連と認知スタイルの安定性の示唆を得た。
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