家族、血縁者、友人、同窓生、同僚などへの態度等の個体の心的過程と産業構造の変化、進学率の変化などのいわゆる巨視的社会的現象の共変的、因果的関係を明らかにするための基礎的手係りを得ることがこの研究の目的である。 2つの実証的研究とそれを基礎として方法的な理論的考察がなされた。以下に結果を要約する。 (1)1970年以降、総理府の手で5年間隔で行なわれた家族、血縁者、友人等に対する青少年の意識調査の結果を本研究の視点から再分析し、Turner and Schutte (1981)がアメリカで見出したと同様に、自己が自己らしくあると感じられる状況が、かっての社会性をもった状況から、非制度的な内的欲求を充足することのできる場面へと変化しつつあることが見出された。 (2)50名の49歳〜81歳の男性に非構造的な面接によって、生涯における重要な人間関係について想起を求めた。その結果、1925年以前生まれの高齢者においては、1926年以降に生まれた者に比べて、血縁者のもつ意味が大きく、換言すれは、次第に血縁関係よりも、偶発的な知己が人生における重要な事象に関係する方向に変化していることが確かめられた。 (3)以上の結果をもとに、社会行動を歴史性に拘束されない普遍性をもつものとして捉えようとするこれまでの研究のパラダイムの再検討が必要であるとの方法的考察が行なわれた。
|