研究概要 |
本研究は社会動機検出のための心理検査「IF-THEN法」の国際版を2年間の期間で構成して,これを行動科学系ソフトウェアの学術保護機関に登録することを目標としたものである。ここで,IF-THEN法とは32個の選択決定課題の系列から成る検査で,各被検者の反応傾向から心理学的ゲーム論に基づいて構成された社会動機模型から導かれる論理的決定傾向によって128回の検出手続きを経て9種の社会動機成分を検出し,反応傾向をその混合比で表現する分析を基本とする検査である。この検査の反応には,言語による影響が介在してこないので交差文化研究に適していると考えられることから,国際版構成が計画されたのである。国内は基本的にはすでに完成しているので,国際版を構成するためには,群間比較を可能にする技法も含めた技法の緻密化と整備,分析プログラムの国際的汎用コンピュータへの移植,検査用英文マニュアルの作成,各種言語による被験者用教示用紙・反応用紙原版作成,国際登録作業,国際比較データ収集などの作業が必要で,これらが本研究の主要な各プロジェクトであった。前年度においては,まず,分析方法の基礎整備と分析プログラムのIBM系コンピュータへの移植作業が重点的に行われ,英文マニュアル,教示・反応用紙の国際版原版の構成も行われたが,たまたま機会を得たので国際版の実際の適用研究例としてロシア・中国・台湾での実際のデータ収集も行われた。本年度は,これらのデータ分析とそれをふまえた上での技法の再整備がなされ,本検査が国際版検査法として十分な有効性をもつことを実証した。国際版検査の体裁整備のためにやや予定が遅れたが,現在ProGamma社へ登録申請中であり,数カ月後には登録事務も終了すると考えられる。これはたんに時間だけの問題であるので,本研究は所期の目的に沿って順調に進み,その目標とした水準にほぼ達した成果を得たといえる。
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