ソフトウェア産業は、1980年代のハードウェアの技術革新、好景気の背景に急成長を記録した。しかし、バブル経済の崩壊は、ユーザー企業のソフト開発投資の見直しを迫り、大型汎用コンピュータを軸にした集中処理から、ダウンサイジング、オープン・システム化、パッケージ・ソフト化、エンドユーザー・コンピューティングを特徴とする分散ネットワーク処理へと「情報技術の世代交替」が急速に進行した。 このような技術環境および内外の経営環境の激変は、従来の重量型多重企業間関係を基底に、労働集約的生産を軸としたソフトウェア企業に対し、拡大しえない市場での競争をいっそう激化させた。今日の情報化に対する厳しい評価と選別・淘汰の時代を迎える以前と以後を明らかにすることを目的に、ソフトウェア企業を対象にパネル調査を実施した(第1回調査に1991年9月、第2回調査に96年3月)。 調査結果によれば、まず、ソフトウェア企業の主要業務は、汎用機の応用ソフト開発の一括、下流大程委託からPC/WSの小型機のソフト開発へと大幅に移行したが、地方に立地する企業ではその比率が低下している。 雇用に及ぼした影響として、従業員数を減少させた企業が顕著であり従業員構成では、男性化、高学歴化、大卒に占める理系比率の上昇が著しい。また、採用抑制や外注削減による雇用調整策の実施率は高く、解雇を含む人員整理に訴えた企業も少なくなかった。この傾向は、とくに地方企業により深刻であった。その結果、従業員の定着化および定着志向を強めている。 全般的な労働市場の悪化を背景に、不足する高度な専門的能力を有するSEと代替可能な余剰労働力(プログラマ-)との需給のミスマッチの状況から、再びSE・プログラマ-の不足状況に変わりつつある。
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