研究概要 |
本研究の目的は、話しことばから書きことばへ移行しつつある幼児の読みの発達を検討して得られた知見を活かし、文字言語の習得につまづいている発達遅滞児にたいする評価および指導用プログラムの開発とその実用化を意図した。まず、読み書き障害のある失語症者の評価・指導のための2音節語検査(手束,1987)を幼児用に修正し、音韻分解・抽出能力の視点から健常幼児100余名と特殊学級在籍児童70名について調査し、その結果にもとづいて修正を加えた(坂口,崎原,飯高,1993)。この修正版を再度、成人失語症者へ適用し(鈴木,1994;後藤,1994)、失語症者および精神遅滞者(佐藤,丸山,崎原 1996)にも適用、彼らの読みの評価と指導に有効であることを見いだした。さらにこの修正版ソフトを使用して、特殊学級に在籍する精神遅滞児(理解語彙年齢 4:3)にたいし、実験的追跡指導を行った。音韻分解・抽出活動を取り入れた2〜3音節語のしりとり遊びやカルタ取りゲームへの適用(飯高,崎原他,1995)や,FCAIによる「しりとり」ソフトの開発(小林,堀口,1995)へと発展した。また、読みにつまづきのある発達遅滞児の「ひろい読み」過程を詳しく検討するため,評価・指導用のソフトをFCAIを用いて開発した。4〜6歳の健常児および精神遅滞児各30名に適用し吟味した結果、その有効性が示唆された(大塚,崎原,飯高,1996)。これまでの結果を総合し、教育現場で使いやすいコンピュータのソフトプログラムの解説書および指導用手引き書を研究成果報告として作成した(1996)。
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