研究概要 |
本研究では、日本の私立高等教育機関の多様性と独自性を明らかにすることを最終的な目的として、まず、大学設置母体の宗教による類型化を行った。1990年までに設置された大学の宗教別分布(法人単位)は、カトリック系3.7%,プロテスタント系10.5%、仏教系7.9%,その他宗教0.8%,非宗教系77.1%となった。次に、新制大学設置に至る過程を10に分類した。新制高校から短大を経由して大学に昇格するタイプが最も多く22.7%を占めていた。1955年以後に設置された大学ではその比率は33.8%にもなる。戦後派の大学の多くは戦前の旧制中等教育機関に淵源を持つ。 大学設立時の学部学科編成、その後の発展は、宗教による違いが大きい。カトリックは、女子の教養教育が主流でその後も組織変化は少ないが、プロテスタントは、共学比率がより高くなり学部学科編成もより多彩である。共学化もわずかだがみられる。仏教系は出発時から共学志向が強いが、学部学科編成はやや実学的であり、その後の共学化は著しい。非宗教系は、共学志向で多彩な学部学科で出発し、その後の変化も著しい。 学校法人役員も設置者の宗教によって大きく異なっている。カトリック系は理事・監事の数は少なく、しかも当該大学教員や法人専任職員など「内部者」が数多く就任している。これら「宗教型法人」の他、非宗教系が多くを占める「企業経営者主導型法人」、「教員型法人」が識別される。戦後数十年の間に徐々に理事・監事に教員が就任する割合が高くなる。教員比率の高さは日本の大学法人理事会の特徴である。 アンケート調査に基づいて大学の建学精神の内容分析を行った。キーワードの類似度分析により、「大正新教育型」「宗教型」「産業社会型」「新時代対応型」「創造性志向型」「教養教育型」が識別された。 学校法人傘下の学校編成に注目して、高校がどのような法人によってどのようにされているかを分析した。私立高校の56%は高校法人、44%は大学・短大法人によって設置されている。高校法人の8.6%は、経営および教育上、大学・短大法人とかかわりをもっている。従って、私立高校の約半数は高等教育機関と密接な関連を有している。
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