研究概要 |
(1)一般定期刊行物に掲載されたアィヌ民族関連記事・写真等を網羅的に入手し、内容分析、資料価値評価、キーワードおよび書誌的情報を付加の上、レコード件数10,370件(容量7.6MB)の資料目録データベース(媒体は光磁気ディスク)を構築した(今後、入力未了分の追加により件数は12,000程度に増加の見込み)。内容分析の結果、約400分野のフォルダーが設定され、前記の機械可読データベースとは別に、主要資料を分類整理レた資料アーカイブを編成した。 (2)3年間の資料動向を分析して次のような知見が得られた。 (i)マスメディアにおける「アイヌ・ブーム」が国際先住民年の終了とともに冷却したことが定量的に確認された。特に、海外先住民族の状況との比較報道は著しく減少した。アイヌ民族初の国会議員の誕生(94年8月)以降は報道対象が当該議員の言動に集中している。 (ii)主に地方紙にみられる傾向として、既成のいわゆる「運動家」以外の人々に焦点をあてた紹介記事が増加した。96年以降は、教育現場での多様な(かつ各地での同時平行的な)取り組みを紹介する報道が目立ち、その今後の動向が注目される。 (iii)「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」(内閣官房長官私的諮問機関)の進捗に関する報道が予想以上に少なく、争点となった「先住権」について実体的議論が喚起されなかった。同懇の討議内容が現代史・国際関係の領域よりも先史・考古・古代史の領域に重点をおいて展開されたことと、96年夏以降の報道傾向として地名研究や古代史考察の素材としてアイヌ民族を位置づける記事が急増したこととの間には、一定の連関が見出される。 (iv)環境保護、エコロジー思想の観点からアイヌ民族を理想化して描く傾向は和人側に根強く存在するが、アイヌ側ではその言説に与するか否か、立場に両極化が見られはじめた。 (3)大学教育・高校教育等で利用しやすい資料の評価・選定をおこない、さしあたり324点をデータベース上で指定した。なお、評価作業の終わっていない資料が約1,200件があるので、その作業を急ぎ進めたい。
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