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農業技術を巡る言説の近代的生成について-明治末期以降の熊本・福岡両県の改良短床犂を中心として-

研究課題

研究課題/領域番号 06610291
研究種目

一般研究(C)

配分区分補助金
研究分野 文化人類学(含民族学・民俗学)
研究機関九州女子大学

研究代表者

牛島 史彦  九州女子大学, 文学部, 講師 (10258345)

研究期間 (年度) 1994 – 1995
研究課題ステータス 完了 (1995年度)
配分額 *注記
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1995年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1994年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
キーワード犂 / 抱持立犂 / 近代農政 / 裏作 / 馬耕教師 / 乾田馬耕 / 競犂会 / 暗渠排水 / 近代短床犂 / 農機具特許 / 耕地整理 / 福岡県北部 / 筑前農法 / 熊本県北部 / 菜種 / 果樹栽培 / 換金作物 / 雇人 / 犁 / 肥料商
研究概要

旧.粕屋郡および周辺部の古老を尋ね廻り犂の呼称を聞いてみると、近代農業史上有名な「抱持立犂」は実際にカカエズキと呼ばれていたことが分かる。そして大正期に改良型が普及すると、カカエズキは田から逐われて畑の作条用に零落したことが、彼等の子どもの頃の農作業の思い出として残っている。いっぽう「クレ拾い」という言葉が、これは実際の作業に参加した経験ではなく幼少時に眺めていた農作業の風景として記憶されているのだが、カカエズキでは反映された土クレ(土塊)が大きく、これを一個づつ拾って鍬で砕いでおかねばならなかったという。
彼らが犂耕を初めて習得した大正初期の頃には、鉄の犂床と鋼板製の曲面のへらを備え土の反転とクレの粉砕に有利な改良型の犂が登場するが、こうして「クレ拾い」の手間が解消される以前の時期を、彼等は「モッタテ時代」とも呼んでいる。具体的な聞き書きの場に突出したこの「時代区分」の発想は、農学の知識がムラへ還流したものといえるのかも知れない。昭和以降、我が国の犂の分析や研究をリ-ドした九州帝国大学農学部は、同じ粕屋郡にあって近隣の農家や農機具商と密接に交流していた点からみて、その源郷のひとつであった可能性がある。
その講座の初代教授.森周六博士は地元の彼等の仕事場に出入りしてデータを収集し研究成果を還元していったと故老たちは語るが、極めて具体的な形での「産学協同」体制の至近距離で犂を駆使していた彼等にとって、それはもはや父祖伝来の在来農具ではなくなっていたと考えてよいだろう。さらに青年時代の彼等を襲った農村恐慌は、犂を駆使する「百姓仕事」を、極端な高給が約束された犂の実業教師として世に出るための特殊技能へと変質させるのである。抱持立犂の「本場」に育った彼等は、犂の操作を小学校を終える頃から一種の精神修養として青年団の先輩たちに叩かれながら厳しく仕込まれ、村や郡ごとに開催される「競犂会」の成績で「男」としての名声が測られた。
本研究では、行政と技術と歴史が個々人の生をどのように揺り動かし、また個々人の生がそのようなものをどのように彩っていったのかという、極めて平明な事項をインタビューと特許資料などをもとに辿った予備的研究である。

報告書

(3件)
  • 1995 実績報告書   研究成果報告書概要
  • 1994 実績報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (9件)

  • [文献書誌] 牛島史彦: "民衆宗教における稲作技術指導" 九州女子大学紀要 特別号. 105-125 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 牛島史彦: "機械技術:文化人類学的視点" 日本機械学会誌. 1. (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 牛島史彦: "ヒトと技術の近代思想-「松山武単鏡雙犂」の特許資料をめぐって-" 三和新聞. (1997)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 牛島史彦: "M氏の昭和27/28年「農家日記」-農家経営を中心とする農村生活誌にむけて-" 国立歴史民俗博物館研究報告. (1997)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 牛島史彦(共著): "講座 日本の民俗学 第2巻" 雄山閣, (1997)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 牛島史彦(共著): "現代民俗学の視点 第2巻" 朝倉書店, (1997)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 牛島史彦: "機械技術における能率と教育-文化人類学的視点から-" 日本機械学会誌. 99-926. 52-55 (1996)

    • 関連する報告書
      1995 実績報告書
  • [文献書誌] 牛島史彦(共同執筆): "日本民族学講座" 有精堂(仮題)(未定), (1996)

    • 関連する報告書
      1995 実績報告書
  • [文献書誌] 牛島史彦: "民衆宗教における稲作技術指導-不二道文書をめぐる覚書-" 九州女子大学紀要 人文社会学編. 特別号. 105-125 (1994)

    • 関連する報告書
      1994 実績報告書

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公開日: 1994-04-01   更新日: 2016-04-21  

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