本研究では、「コ-ポレイト・シチズンシップ・フォア・ディベロップメント(開発に向けた企業市民活動)」という独自の視点から、東南アジア及び太平洋地域という発展途上国を対象に、その企業活動の現状を調査した。調査方法は、主に文献研究とアンケート調査を用いた。文献研究では、ここ数年間の新聞等のメディア資料収集の中で、東南アジアの企業関連記事の増加とその内容に注目し、あらためて日系企業の東南アジア諸国における役割が増大していることを確認した。2か年にわたり同地域の企業600社に対してアンケート調査を実施した。その結果から、東南アジア地域に於ては特にジョブホッピング(転職)問題に企業が頭を悩ませ、また太平洋地域ではより従業員の労働意識の低さにより対策を練る必要に迫られていた。実際、より労働コストの低い途上国に移動する場合、雇用の創出という面では当該国に貢献できるが、労働者の勤労意欲あるいは社会への忠誠心を育てる人材教育を行わない限り、企業の成功はないだろう。この点をふまえて、日系企業も対応しているが、皮肉にも、教育を行えば行うほど従業員が離職するジョブホッピング問題の難しさもあり、企業も地域貢献の中から新たな対応を模索している。企業貢献の考え方は、1990年代に入って日本の企業の中に定着し始めてきているものの、東南アジア等の現場では地域のNGO活動と連携した地域参加型プログラムに資金援助している企業は以外に少なく、多くの課題が残されている。
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