研究概要 |
研究の結果えられた新たな知見は、以下の通りである。 1,売券の分析によって、戦国期に領主の地域呼称とは異なる地域呼称を民衆が使用していたことを明らかにした。さらに、戦国期の民衆は、生活する地域基礎単位をムラと呼び、ムラとムラの集合体はショウ・リョウと呼ぶようになったことを明らかにした。 2,民衆の地域認識を生み出す根拠の一つであるムラとムラの基礎的結びつきを確認するために、惣墓(数個のムラの墓地)の分析を行なった。この分析によって、ムラとムラの集合体であるショウ・リョウという地域結合の社会的背景の一つに、墓地による結び付きがあることが明らかになった。 3,ショウ・リョウの連合によりクミが形成される。そして、このクミが形成される要因としては、戦争協力・用水協力・財産保管協力・通婚圏・分業流通圏があることをあきらかにした。 4,さらに、ムラからショウ・リョウへという広がりは、クミ、さらに群規模の範囲のクニへと広がっていくことを明らかにした。このクニは幕府・守護の支配単位の国ではなく、民衆が作り出した民衆のための広域の地域である。 以上の研究により、従来地域権力(自治組織)研究のかたよりがちであった戦国期地域史研究を乗り越え、生活のレベルの地域史研究を生み出すことに成功した。
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