研究概要 |
日本人のアジア観に関する歴史的研究において,下記の諸成果をあげることができた。 1.本研究を進めるうえで基礎的工具となる『日本アジア関係史研究文献目録』(単行書篇)を,多賀出版から刊行した。これは,8千冊に及ぶ単行書を戦前と戦後に大別し,さらに各々を,一般,前近代,近現代に細分した,本邦最初の目録である。この目録を編さんするため,国立国会図書館などの所蔵機関を利用させていただいた。 2.日本人のアジア観にかかわる文献史料を解読・吟味したが,これらについては,詳細な注釈と解説を付した史料集を編さんする方向で鋭意,作業を進めている。大学・高校などの教育現場でも利用可能な,有益な史料集を公刊したい,と思っている。この書の刊行については,明石書店にお願いすることになっている。 3.日本と朝鮮の,近世における文化交流に貢献した,加賀藩の儒者・伊藤幸野の墓地調査(金沢市・野田山)を3回実施したが,いまだにその所在を確認しえていない。引き続き調査活動を進め,現在,空白となっている日本海側の朝鮮通信使に関する文化遺産の発掘に努めたい。北海道におけるアイヌ民族の記念碑については,ほぼ,その所在地を確認した。 なお,いわゆる蝦夷三官寺の調査は,本年の夏に行なう予定である。 4.古代から近代に至る日本人のアシア観の概要については,別冊の研究成果報告書で略述したが,詳細は単行書の形で発表することにしている。その研究成果の一部は,『エンサイクロペディア』(丸善)の分担執筆のなかに取り入れておいた。 以上の諸成果を踏まえ,これからも本課題の研究活動に精進する所存である。
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