研究課題/領域番号 |
06610328
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
日本史
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
湯浅 隆 国立歴史民俗博物館, 歴史研究部, 助教授 (20150021)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1996年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
1995年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1994年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 養蚕 / 蚕書 / 挿し絵 / 耕織図 / 養蚕秘録 / 養蚕技術書 / 挿絵 / 西欧養蚕国 / 絵画 / 博物学 / 日本近世史 / 養蚕業 / 史料学 |
研究概要 |
この研究では、江戸時代に作成された蚕書に描かれた挿し絵を、歴史研究のための史料としての有効性という視点から追求してきた。その結果、江戸時代蚕書の挿し絵は、中国から渡来した絵画の系譜を引いた耕織図の影響下にあらわれ、その絵画としての要素から、時期を経るにしたがい技術伝達を目的とした図版としての性格を強めていったものであることが判明した。 この流れのなかにおける画期は、19世紀初頭に上梓された『養蚕秘録』であり、このときから蚕書の挿し絵に図解としての性格が現れるようになってきた。この蚕書の挿し絵は、絵画と図解との要素が混在していることが特徴である。この挿し絵は、前者から後者への過渡期のものというよりは江戸時代文化の特性として把握するものと考える。 こののち幕末期にかけて、挿し絵を伴う蚕書が数量としては増加していくが、挿し絵そのものは『養蚕秘録』からの転写がほとんどであり、技術伝播を目的としたメディアとしての新たな展開は認められない。したがって、江戸時代に著された蚕書中の挿し絵については『養蚕秘録』収載のものだけが史料としての信憑性をある程度備えたものと見なし得るのである。 こののち、幕末開港期には日本の蚕書が当時の養蚕最先進地帯であったイタリア・フランスにて翻訳・刊行された一方で、両国の養蚕技術も日本へもたらされた。明治5年に田島彌平が著した『養蚕新論』にいたり、耕織図の影響を払拭し、挿し絵は技術解説の手段としての挿図という性格を明確にしていったのである。
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