研究課題/領域番号 |
06610349
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
東洋史
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
笹川 裕史 和歌山工業高等専門学校, 一般教育科, 助教授 (10196149)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1995年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1994年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 中国国民政府 / 土地政策 / 土地制度 / 地税制度 / 日中戦争 / 長江下流域 / 地価税 / 戦時体制 / 土地税制 / 抗日戦争 |
研究概要 |
本研究によって、以下のような成果を得た。 1.抗日戦争前夜における中国国民政府の土地政策の全体像とその到達水準をほぼ明らかにした。本研究でとりあげた長江下流域は、国民政府による土地政策の実施が最も進展した地域の一つであり、その到達水準を把握するうえで格好の素材である。その土地政策には、小作農保護や自作農創設などの施策も含まれるが、中心を占めるのは、土地・地税制度の近代化であった。すなわち、1筆ごとの土地測量、土地登記、地価税の算定とその徴収という一連の改革であり、とくに1筆ごとの土地測量は農業生産力の高い江南地域の平野部ではほぼ完了しつつあった。これが実現すれば、私的土地所有が国家によって正確に把握され、法的に保障されることになり、土地の商品化や資本への転換を促進する作用をもつ。また、地税収入が確保・増加し、各種の近代化政策を推進する政府の財政基盤を強化することにもつながる。さらに、その過程で、旧来の土地税制の下で税負担上の非公式の既得権を享受していた有力地主の優位性は喪失し、一般の土地所有者はその不公平で過重な税負担を軽減されることになる。したがって、政策の実施は、有力地主を中心とする既存の地域社会秩序と摩擦を引き起こしつつ進展していたのである。 2.第1点で述べた政策志向が抗日戦争開始以降の戦時状況の中で中断・後退していくことについて、一定の見通しを得た。重慶に拠点を移した国民政府は、上述の土地・地税制度の近代化をそのまま継続する余裕を失い、より不徹底な土地申告制に重点を移していく。重慶政府の戦時体制に伴う収奪の強化は、旧来の極めて不正確な土地把握を前提に行われていたのである。
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