研究課題「『金印勅書』(1356年)成立前1世紀間のドイツの帝権・帝国理念史の研究」については、刊行史料の適時の入手と、取り寄せたマイクロフィルムの選択的な焼付・引伸に科研費を充分に活用することが出来た結果、研究の深化・進展を見、二度の学会報告と三本の論文に結実した。 まず13世紀後半のドイツ人著作者の意識と理論の再吟味を行い、平成6年11月の史学会(東京大学)大会における部会報告を果たし、その成果は分担執筆の単著論文「ロエスのアレクサンダーと13世紀の帝権移転論」となり、『西洋中世像の革新』(刀水書房、平成7年4月刊行予定)に収載される。 次に大空位時代から『金印勅書』(1356年)の成立に至る約1世紀間にドイツ人の著した年代記・歴史著作・都市年代記・叙事詩等から、ドイツにおける帝国と王国、皇帝と国王の理念の区別と相互浸透を究明し、中世後期ドイツにおける「ドイツ帝国」史への意識とその内包する矛盾を解明した。この主題に即して平成6年11月の西洋史研究会(東北大学)大会における自由論題報告を果たし、成果は単著論文「Regnum Alemanie et regnum Romanorum seu imperium Romanum-13/14世紀における「ドイツ」と「帝国」・「ローマ王権」と「皇帝権」」にまとめられ、平成7年11月刊行予定の『西洋史研究』(西洋史研究会刊)新輯第24号に掲載予定である。 第三に、法学者ル-ポルト・フォン・ベ-ベンブルクの、法学的著作と文学的著作の接点に位置する諸著作から、帝国理念と帝国史観を解明することが出来、特に主著『諸法論』の精密な分析・検討の成果である単著論文「ドイツ王権・「ドイツ帝国」・帝権-ベ-ベンブルクのル-ポルトの「王国かつ帝国(regnum et imperium)」」(平成7年2月完成)は研究誌への投稿を待つばかりである。
|