研究概要 |
本研究は、古代ペルシア帝国の人物誌的調査と、そのデータにともづく具体的な考察を意図したものである。報告者は、これまで、古代ペルシア帝国の王権、行政、司法、軍事、税制などの考察を通じて、帝国支配の二重構造や人格的関係の優位を示してきた。支配の構造的理解を深めるために、帝国支配者層の様相をいっそう具体的に把握することが新しい課題とされ、人物誌的研究はその一つの有力な接近方法として取りあげられたものである。 研究計画にもとづいて、最初に、帝国支配者層の人物誌的データの収集と整理が行われた。しかし、その成果は、本研究と時を同じくして公刊されていたJack M.Balcer,A Procopographical Study of the Ancient Persians Royal and Noble, c.550-450B.C.,Lewiston/ Queenston/Lampeter,1993の一部と重複することが判明したために、本報告書に収録されていない。したがって、ここに集められたのは、データ調査と並行して進められた個別,具体的テーマの研究2編と、関連する基礎的史料の翻訳1編である。古代ペルシア帝国の人物誌的研究は、なお多くのテーマについて可能であり、また試みられなければならない。本研究は限られた期間のあいだに行われたものにすぎないが、その成果は古代ペルシア帝国支配の構造的理解にかかわる内容を取り扱ったものとして、今後の研究に寄与するところが少なくないと考えられる。
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