研究概要 |
1.古版本に見られる書き込みに関しては、喜劇(Wives,Shrew,MV,Dream,LLL,Ado)及び悲喜劇(Pericles,Troilus,Kinsmen)の一次資料を整理するかたわら、明星大学所蔵の2つ折本全巻におよぶ1630年代らしい欄外書き込みを積極的に収集し、ほぼ完全な形で整理することができた。その一部を研究成果報告書として冊子形式にまとめたゆえんである。本課題の〈欄外書き込みの覚え書き〉に関する部分の質的内容をさらに高め、今秋、日本シェイクスピア協会の年次大会で口頭発表すると同時に、一般学術図書としての公刊を目指して、文部省の「研究成果公開促進費」の申請をする予定である。 明星大学所蔵の2つ折本の行数と覚え書きの収集量(単語数)との割合を概数として示せば、次の通りである。Wives,200/2729(7.32%).Shrew,370/2750(13.45%).MV,371/2737(13.55%).Dream,300/2222(13.50%).LLL,375/2900(12.93%).Ado,305/2684(11.36%).Troilus,882/3592(24.55%).(PericlesとKinsmenは2つ折本には含まれていない。) 覚え書きの割合が一番高いのはTroilusである。これは、シェイクスピア時代までの伝統的な喜劇でもなければ悲劇でもない、悲喜劇という新しいジャンルの演劇として、この作品が読者に特異な反応を迫った結果であろう。この作品の文学的解釈が単純にはまいらない、という何よりの証拠かも知れない。 2.本文の分析と批判に関しては、裏面記載の研究発表の通りである。
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