研究概要 |
ト-トロジーについての全般的研究を行い,ト-トロジー"X etre X"が,意味論レベルにおいては,無意味な文化であるが,実際の発話では,さまざな意味が伝えることのできるメカニズムを明らかにした。自然言語のコピュラ文には,変数的に使われた非指示的名詞句に値の割り当てを表現する同定文(L'auteur des Fleurs du Mal est Baudelaire.),すでに同定された対象に付加的属性を付与する記述文(Baudelaire est l'auteur des Fleurs du Mal.)という極めてよく似ていながら,さまざまな点で異なる2つの用法がある.ト-トロジーには,記述文の肯定と否定,および同定文の肯定と否定で,都合4通りの用法がある.そのそれぞれについて,例文の収集と分析と,及びそれにもとづく理論化を行い,プロトタイプ意味論にもとづくカテゴリー形成を使い,包括的なト-トロジー理論の構成を試みた。その結果,通常のト-トロジーは記述文にもとづき,コンテクストで前提されるカテゴリー構成で極めて多様な解釈を引き起こすことが明らかになった.さらに,同定文にもとづくト-トロジーの特殊性についても,解釈のメカニズムを明らかにした.これは,慣習的意味の枠外で成立する意味現象の重要さを明らかにする一つのモデルを作りの一環として考えられている.また,言語と知識の関連をさらに深く考察するため,フランス語の間接目的語,認知言語学でのタイポロジー,日本語移動動詞「来る」の複合形のさまざまな用法,メンタル・スペース理論での比喩を中心とする研究を行った.
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