研究概要 |
平成7年度は、前年度に引き続き、夏目漱石「夢十夜」の他言語翻訳を検討した。英訳については平成6年度に検討したアイコ・イト-他共訳のほかにOrient/West(Vol.3,No.2,1961)に掲載されたEarl Miner他共訳の"Ten Nights of Dreams"、韓国語訳としては金潤成訳「十夜の夢」 (『世界短編文学集9』、ソウル、三珍社、1971年)、朴裕河訳「十夜の夢」『十夜の夢・こころ』、ソウル、ウンジン出版、1995年)を参照した。 その結果、翻訳という概念が文化間で大きく異なることが分かった。英語圏においては翻訳作品が訳文重視主義という原則に支えられていることはよく見て取れるが、韓国語翻訳作品においても日本語翻訳には見られない段落の再構成など、訳文重視主義の原則が働いている例を発見した。 日本語翻訳と韓国語翻訳の差異については、さらに、平成7年度冬学期にソウル・韓国外国語大学校大学院での授業(国際交流基金派遣)において、韓国人学生の協力を得て、韓国語表現における段落内での時制の統一が日本語表現におけるル形・タ形の段落内統一よりも強固であることを確認した。そのほか、英語訳に見られる「原文」の大幅な変更が韓国語訳にも見られることを発見した。 以上の知見を踏まえて、まず、夏目漱石「夢十夜」第7夜の分析を行い、その成果を『比較文学研究』第68号に「言語の間の「夢十夜」第7夜」として発表した。
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