研究課題/領域番号 |
06610484
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
文学一般(含文学論・比較文学)・西洋古典
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
高橋 宏幸 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授 (30188049)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1994年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | オウィディウス / 『変身物語』 / 『祭暦』 / 叙事詩 / エレゲイア詩 / 古代ローマ文学 / 物語技法 / 詩的遊戯 |
研究概要 |
本研究は、主にオウィディウスの『変身物語』と『祭暦』について、両作品に共通した詩人特有の物語技法を叙事詩とエレゲイア詩という対立するジャンルの境界をする抜けて遊ぶような、機知に富む語りの中に認め、これを個々の文脈に即して検討することを目指した。その成果として、(1)『祭暦』邦訳書と(2)同第一巻をめぐる考察を公表し(裏面、研究発表の項を参照)、(3)『変身物語』第七巻をめぐって研究発表「ケパルスの物語」を日本西洋古典学会第46回大会(平成7年6月10日、於慶応大学)に予定している。 (1)では、邦訳過程での作品全体の理解を踏まえ、一貫した物語展開を阻害していると見える暦の順序に従った『祭暦』の構成がオウィディウス自身の詩人としての不適格性の表現との均衡の上に自己アイロニ-によるユーモアを生む作品の基本構造をなしているとの見通しを解説に示した。 (2)は、(1)も見通しのもとに、その具体的な現れを『祭暦』第一巻の「平和」の提示に観察した。ローマの国家祭祀という叙事詩にもふさわしい荘重な詩題をエレゲイアという小さな詩で歌おうとする企図の成功は詩の平和性という一点にかけられるが、この「平和」は、詩人が約束した暦による構成に従ったときよりも、逆に詩人自身の失態のためにそこから逸脱したときに強く実感されるように表現された。 (3)は、自ら投じた槍で自分の妻を誤って射殺した顛末を語る英雄ケパルスの物語に、自身を「悲運を語る英雄」として演出しようとするケパルスの意図を読み取り、この意図的な語りがケパルスを「見目麗しい英雄」から「涙に濡れる英雄」に変身させていることを論ずる。 総括:「語り手」と「語り手の意図」と「物語」の間の微妙な食い違いによる遊びがオウィディウスの物語技法の特色であり、ジャンルの対立図式もこの詩的遊戯の道具立てと見られる。
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