研究概要 |
1.本研究は過去のことを法制史として研究してきたにもかかわらず、現実に起こっている法現象にも直接寄与する機会を与えられつつあることは望外の喜びであった(もっとも歴史研究は本質的に現実にも対処する知恵を提供するものではあるが)。すなわち、農業者年金法の改正がなされて平成8年度から、農業後継者の妻にも年金支給の途が開けた。それには「家族経営協定」の締結が必要であり、この家族経営協定こそ、親子(間)契約にほかならない。農水省と全国農業会議所では、この「家族経営協定」を強力に推進する役目を担っており、そのために、従来、ドイツの農場譲渡契約やフランスのガエックをその手本としてきた。しかし、外国の例は我が国の農業者にとってはあくまでも他所のことであった。私が江戸の親子契約の研究者であることを知り、以下の通り、全国農業会議所関係のシンポジウム・講演等に参加することになった。本研究は現実に社会的な寄与をなすことになったわけである。 平成7年10月2日 家族経営協定全国シンポジウム・パネラ-(東京・こまばエミナース) 平成7年11月29日 ふくしま県「農山漁村女性の日」推進大会・基調講演(郡山市熱海町) 平成8年1月16日 群馬県農業会議所「家族経営協定」推進職員研修・基調講演(前橋市) 2.本研究にとって最重要なことは,親子契約とりわけ老親扶養に関する地方(村方)文書を多数収集することであったが、実は直接これを示す文書の発見はなかなか困難な作業であることが判明した.1つには研究者が全くいないからであり、関連する史料は若干見いだすことができた. 3.研究対象の1つである聟養子縁組証文については,群馬県を対象地域として収集し、これが主として群馬県史の写真資料であるために、掲載の要件である『ぐんま史料研究』誌上に発表した.また求めに応じて雑誌に雑文を掲載した。
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