研究概要 |
1.自民党政権における閣僚の選出に関する派閥均衡人事と年功序列人事の慣行の成立およびその理論的考察を行った.自民党内における役職人事は主流派優遇から派閥勢力比と議員の当選回数にもとづく閣僚ポストの配分へと移行した.しかし,なぜ,こうした慣行が成立したか明らかにされていなかった.シニオリティ・ルールに関する合理的選択モデルおよび連合の理論を用い,さらに,自民党の議員構成の変化を考慮に入れた理論仮説を提示した.自民党においてシニオリティ・ルールが成立するためには,自民党議員構成が安定し,派閥勢力比を大きく逸脱しない人事慣行が定着する必要がある。この時期は,これまでの通説の佐藤首相期よりも遅く,1970年代半ば以降である. 2.自民党政権における役職人事全般の制度化に関する研究に取り組み,論文にまとめた.役職人事の制度化は,中曽根内閣の初期以降であることを明らかにした. 3.細川連立政権期における国会運営の変化および政治改革法案の立法過程の実証的研究に取り組んだ.国会運営のルール変化は政策対立を反映したものではなく,議会内役職の配分に関するものや従来の国会運営一般の改革であったこと,また,制度ルールの変更は基本的に小幅にとどまった.しかし,一つの重要な変化として,全会一致による国会運営の慣行が崩れ,それに代わって多数決による運営が新しい均衡制度として定着したことが明らかとなった. 4.連立政権以降,これまでにはなかった議会における多数派の形成と維持の問題が生じた.この多数決の不安定性と議題設定と戦略投票の可能性の問題を生じさせた.94年1月の参院における社会党造反議員の行動は,政府案に反対投票したために自分たちにとって最悪の最終妥協案が成立することに手を貸した形になった.本研究では,採決を不確実な議題設定下の不完備情報モデルとして捉え,彼らの行動を合理的行動として説明した.
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