研究課題/領域番号 |
06630010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
経済理論
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
平井 俊顕 上智大学, 経済学部, 教授 (60119112)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1996年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
1995年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1994年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | ケインズ / ケインズ革命 / 『一般理論』 / 「ヴィクセル・コネクション」 / 貨幣的経済学 / 市場社会観 / 『貨幣論』 / 理論的変遷過程 / イギリスの経済的衰退 / シュムペーター / ミュルダール / ハイエク / 国際主義 / ケインズ講義録 / ケインズ文書集 / ケインズ全集 / ヴィクセル・コネクション |
研究概要 |
本研究の目的は、「ケインズ革命」の実態を、一次資料、ならびに最近の関連諸研究の検討を通じて理論史的ならびに政策論史視座から解明することにある(重点は理論史におかれている)。「研究成果報告書」はA Study of Keynes's Economics-from A Treatise on Money to The General Theoryというタイトルのもと、全17章、4つの補章で構成されており、80桁×35行換算で約750ページの英文報告書であり、『上智経済論集』(1997年〜1998年)に4号に分けて掲載を予定している。論点は多岐にわたるが、そのうちのいくつかを以下に示すことにする。 (1) ケインズの理論的変遷過程をとらえるうえで、ケインズが利潤と産出量のあいだの関係をいかに扱っているのかに注目することは決定的に重要である。『貨幣論』では、この関係(私たちはこれを「TM供給関数」と呼んでいる)は動学的メカニズムを表すものとして重視されていた。多数の批判にもかかわらず、『貨幣論』の後もケインズはこの関係を重視していた。しかしながら、1932年の末になると、ケインズは若干のためらいをみせつつも、「TM供給関数」を捨て、『一般理論』に通じる新しい財市場モデルを提示するに至った。 (2) 『貨幣論』は「ヴィクセル・コネクション」に属している。これはミュルダール、リンダール、ミーゼス、ハイエク等を含んでおり、新古典派経済学に対峙する貨幣的経済学を標傍するものである。しかしながら、『貨幣論』には2種類の理論が併存していた。「ヴィクセル型の理論」と「ケインズ特有の理論」である。『貨幣論』刊行の直後、ケインズは前者を棄却しており、後者の維持もしくは改良に努めている。私たちは『貨幣論』後のケインズは「ヴィクセル・コネクション」には属していないと考えている。当然のこととして、『一般理論』は完全にそれからは独立した存在となっている。 (3) 『一般理論』の革命的性格は、簡明なモデルにより、市場経済は放任されると不完全雇用均衡に陥ることを明らかにした点に求められる。ケインズのモデルは、ポスト・ケインジアンや「不均衡アプローチ」ケインジアンの主張とは異なり、均衡分析に基づきつつ雇用量がいかに決定されるのかを示すものである。ケインズがこうした分析方法を採用しだすのは1933年になってからのことである。以後、ケインズは有効需要概念、資本の限界効率概念、流動性選好理論等の改善を重ねながら、自らのモデルの精緻化に傾注している。私たちは、こうしたケインズの努力を可能なかぎり詳細に跡付けてみることにした。また、私たちは『一般理論』においてケインズは市場経済を2つの対照的な様相、すなわち、一方で安定性、確実性そして簡明性、他方で不安定性、不確実性そして複雑性を有するものとして描いている点を強調する。
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