1.研究実施計画との異同:調査対象予定企業の内、自動車ではダイハツ、家電では松下電産と松下電工ならびに三洋について調査を実施できなかった。結果として、自動車はトヨタとマツダ、家電はエプソンとダイキン工業、鉄鋼は新日鐵の5社の調査を実施した。なお、研究目的、調査の力点等については研究計画調書等の計画と同一である。 2.研究によって得られた新たな知見:(1)従来、労使関係研究は労働力取引の反対給付(賃金・昇進)の構造やそれらを決定する労使の話し合いの場の性格(労使協議・団体交渉制度)に研究が偏っていたが、本研究を通じて、労働給付それ自体の構造への接近方法が多少とも明確になった。それは工場の能率や品質の方針管理の仕組みの分析を機軸にして、方針管理→職場の業務計画→人的資源の配置、活用、育成が論理一貫して説きうるというものである。(2)こうした管理での今日の問題点は、自動機器を中心とする機械化の進展により、設備保全に要する要員の比重が増大する傾向にあるが、これを現行の能率管理が首尾よく処理できないという点にある。この問題に対してはラインの要員に対する一定比率を天井とするというやり方以上を追従できていない。(3)この方針管理の具体的内容は企業によって相違する。最も大きな違いは、管理を物理的指標を通じて行うか、マネタリーな指標に置き換えるかである。今次のリストラのプロセスの中で、マネタリーな指標に動く傾向が強まっている点が注目される。(4)他方今後の研究の展望とのかかわりでは、本研究により、(1)労働活用の柔軟性に関する国際比較の経営管理上の尺度が用意できた。(2)ホワイトカラーの生産性研究への確かな手掛かりがつかめた。
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