本研究は、耐久財独占モデルにおいて賃貸とならんで「コースの推論」を回避する方法としてモデルチェンジの問題を理論的・実証的に考察したものである。 計画的陳腐化としてのモデルチェンジは、自社が過去に生産した製品との差別化である。本研究では主にこの問題を考察する計画であった。しかし研究を進める中で、モデルチェンジついてよくいわれている他社との製品差別化の側面が、やはり重要な意味を持っていおり無視できないと考え、この側面も考慮することとした。 理論分析と平行して行ったメーカーの開発担当者へのインタビュー調査によると、モデルチェンジを行う動機としては、ライバルメーカーとの技術競争への対応や、そのモデルへの設備投資コストが重要な役割を果たしているということであった。 そこで日本車および外国車の主要モデルのモデルチェンジのサイクル、および盛り込まれた新技術のデータを整理した。これにより、よく言われているように同じタイプの外国車に比べ、日本車のサイクルが短いことを確認した。その結果の一部は、「製品差別化と競争」に発表した。また、パネルデータを用いてモデルの月齢と売上高の関係を計測したところ、一般的にはモデルの古さと売上高の間に負の傾向を見いだすことは出来なかった。これは、理論分析では単純化のために完全独占の市場構造を想定したが、わが国の自動車産業は競争的であるためと思われる。このような競争の要因を考慮するために、販売台数の対前年同月比を被説明変数とし、説明変数としてモデルチェンジ経過後の月数、メーカーの市場シェア、同一セグメント内でのそのモデルのシェアを用いた仮説モデルを設定した。データの入力は終わり、計量分析を行っているところである。計算結果が出しだい学会誌などに発表する。
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