1.わが国の法人税と個人所得税の負担調整方式として包括的事業所得税法(CBIT法)を採用する意義は次の三点にある。(1)CBIT法は課税投資家・非課税投資家を通じて同一の課税ルールによって、企業の資金調達に対して課税の中立性を達成できる。この点、完全統合法・インピュテーション法・支払配当控除法などに伝統的統合方法より優れている。企業段階での利子控除否定により利子・留保・配当に一律課税できるからである。(2)企業段階での一律源泉課税であるため税務執行が容易である。株式持ち合い・メインバンクが盛んなわが国にとって、この点の意義は大きい。個別株主の限界税率で課税する伝統的方法は、株式持ち合いなど企業単位の資産運用になじまないからである。(3)包括的所得概念による公平課税論を基準にしても、非課税組織に資金を提供しいる担税力ある投資家に課税できる点では伝導的方法より優れている。今後、資本市場で年金基金など非課税組織の重要性が高まることが予想されるだけに、このメリットも意義深い。 2.CBIT法をわが国で適用する場合、以下の問題がある。(1)投資家段階での利子税を廃止しなければ借り入れが重課される。この点を克服する代案として修正CBIT方式が考えられる。完全利子控除制を続けすべての投資家の受取利子に配当・留保と同一の税率を課す方式でる。(2)適用課税を個人所得税の最高税率にすると、課税の公平上問題が多い。(3)開放経済下では源泉地主義の承認を意味する。 3.以上をふまえてから今後次の点を深めたい。(1)公平課税論を基礎にしてのCBIT法・修正CBIT法の最適税率水準の考察。(2)開放経済下で、CBIT法・修正CBIT法・伝統的方法を中立性・公平性の観点から比較すること。
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