1.研究計画に従い、まず、酒類を中心とするわが国および米国の流通・マーケティングの歴史的資料および二次資料を収集し、データベース化による資料整理を行なった。当データベースは、日米マーケティング史の比較研究の基礎資料として、今回の研究に限らず活用が可能なものであり、今回の研究の貴重な成果の一部である。 2.史資料の分析・検討の結果、戦前わが国の「配給」研究に、マーケティング史の日米比較研究のための重要な素材が含まれていることを発見し、この部分の分析・とりまとめに力を集中した。製造企業の前方統合によるマーケティングが自生的に展開された米国に比して、卸売業者と政府の介入が強いわが国のマーケティングは対照的な内容を示しており、戦前「配給」研究は、こうしたわが国マーケティングの歴史的特徴を体現するものである。 3.上記「配給」研究の検討がかなりの量にのぼったため、とりあえずこの部分の検討を切り離し、平成7年5月に米国インディアナ州で開催される第7回マーケティング史学会の報告ペーパー(英文)を作成し、平成7年1月末に提出した。これは、3月初めに学会のレフリーをパスしたとの通知があり、大会での報告と同時に大会報告書に掲載される予定である。これにより、本研究の目的の一つであったマーケティング史比較研究の国際的要請に応えるという目標は一応の達成をみた。 4.このペーパーは、本研究が掲げたテーマの一部分であり、日米のマーケティング史の総合的検討は、今後の課題として残されている。今後、こうした方向へ研究を展開する予定である。
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