本研究は、組織分析の分野において従来ほとんど注意が払われてこなかった、我が国のボランタリー組織について、まず、その全体および活動分野別の特性をマクロ・レベルで経済学的に分析した。その結果、次の5つの特徴が析出された。(1)公共奉仕ボランタリー組織では専門化が進んでいる。(2)ボランタリー組織のマクロ経済に占める割合は、一般に考えられているよりもはるかに大きい。(3)ボランタリー組織のなかで教育・研究組織と医療・健康組織の占める割合は非常に大きい。(4)料金・事業収入と会費収入等の独自収入がボランタリー組織の主な収入源である。(5)ボランタリー組織の活動分野には、政府(地方自治体)や企業の分野と重なるものがあるが、これら三者間の協力はうまくいっている。 次に、我が国のボランタリー組織について、統治構造と経営管理(戦略と組織特性)の実態とその規定要因について分析した。その結果、我が国のボランタリー組織の統治構造と経営管理は、営利企業と共通する点も多かった。一方、全く異なった点もいくつか見い出された。例えば、理想を掲げ、使命を持ち、情熱に燃えた組織成員の存在、賛助後援会という外部組織を通じた経常的な資金集め等は営利企業の統治構造にはない特色であった。また、営利企業であれば市場競争度が高いほど競争戦略を採用し同業他社から顧客を獲得しようとするのに対して、ボランタリー組織では市場競争度が高いほど協調戦略を採用している。これらの特色は、たぶんボランタリー組織と営利企業の間の目的の差に帰因するものであろう。
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