研究概要 |
Atiyah-Singerの指数定理の出発点となったスピン構造論の拡張に取り組んだ。 AtiyahとSingerはSpin構造の導入と同時に複素多様体に適したそれの変形物Spin^c構造(c=complex)をも導入しているが,今回,研究代表者は,最近の四元数ケーラー多様体への関心の高まりに刺激されてそれに適すると思われる変形物Spin^q構造の導入に取り組んだ(Nagase,Spin^q structures,J.Math.Soc.Japan,47(1995),93-119)(q=quaternionic)。Spin,Spin^cにおいて論じられた代表的テーマの拡張である,Spin^q群の表現,概四元数構造の導く標準的Spin^q構造,Spin^qベクトル束,Dirac作用素,その指数,等,について上述論文において論じている。 続いてSpin^q構造がtwistor構造を導くこと,そしてそのtwistor空間は自然なSpin^c構造をもつことがあきらかとなった。またそれらの間の指数の関係,エータ不変量の断熱極限,の研究等を進めている(Nagase,Spin^q,twistor and Spin^c(preprint))。こうした概念の意外な関係は,数学的観点からだけでなく物理学的観点からも興味深いものと思われる。 更に,上述の考え方はシンプレクティック構造に対しても有効であり,四元数シンプレクティック構造及び量子束の研究も押し進めている(Nagase,Quaternionic symplectic manifolds and canonical quantum bundles(preprint))。
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