研究概要 |
伊藤敏和は正則ベクトル場の孤立特異点におけるH.Poincare(1879年)とH.Dulac(1912年)の多項式化定理の応用として,2n-1次元球面に正則ベクトル場から定義される非特異な1次元葉層構造のコンパクト葉の数を決定した。さらに,伊藤が得た正則ベクトル場に対するPoincare-Hopf型定理のより一般の状況への拡張を大本亨氏と共同研究中である。 松本和一郎は強双曲型偏微分方程式系の特徴付けを研究した。係数が時間変数にのみ依存する場合に双対変数の各点的には強双曲系は主要部対角のフックス系に相似変換されねばならないことを導いた。これは空間次元が1の場合には必要十分条件である。一方、空間多次元の場合には,更に相似変換行列の双対変数に関する一様有界性が必要となることが予想されるが,Petrovskiのあげた非強双曲系の例が摂動に不安定で容易に強双曲系に移ることを示した。 四ツ谷晶二は境界条件が非線形な拡散系の解の漸近挙動について,これまでの研究を発展させて解の漸近挙動の速さの研究,および実用的な数理モデルの解の存在,一意性と漸近安定性の研究を行った。半線型楕円型方程式については,非常に一般的な状況のもとで,方程式の係数K(r)と指数Pから決まる2つの関数の零点の位置だけから正値球対称解の構造が決まってしまうという,非常に強力な分類定理とその拡張を得た。 岡宏枝は常微分方程式におけるあるタイプの局所的分岐で,ローレンツ型のカオス的アトラクターが生じることを証明した。また,orbit-flipと呼ばれる余次元2のホモクリニック軌道の倍分岐が無限回引き続いて起こるような大域的分岐現象を,ある種の区分線型ベクトル場を数学的・数値的に調べることにより見出した。 森田善久は二宮、柳田との共同研究で非線形境界条件下の反応拡散方程式の解の成す散逸力学系の研究を行い,有界な解をすべて引き込む有限次元の慣性多様体の存在を証明し,その多様体上の力学系を記述する常微分方程式を導いた。また,森田はK.Mishaikowとの共同研究で1次元区間上のGinzburg-Landau方程式の散逸力学系の大域的な構造を明らかにし,神保との共同研究では多次元の有界領域におけるGinzburg-Landau方程式の定常解の安定性と領域の位相的な性質を関連づける結果を導いた。
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