研究概要 |
研究目的である非線形問題へのポテンシャル論的手法の応用のためのステップとして,研究分担者大春愼之助氏は一般的なクラスの非線形分散系と非線形退化放物型方程式の自然な弱解を,新しい発展方程式の生成理論の適用により構成した.この研究によって,これらの方程式は有界変動関数の空間において取り扱うのが自然であることが判明した.また研究分担者松本敏隆氏は,Banach空間におけるある種の抽象的半線形発展方程式の初期値問題における大域解の存在および解の滑らかさについて新しい知見を得,その結果を筋肉の収縮を表すモデル方程式に応用した.研究分担者内藤学氏と内藤雄基氏は2階非線形常微分方程式の初期値問題の解の零点の個数について調べ,その結果として,ある2点境界値問題に対し与えられた個数の零点を持つ解の存在を示した.さらに内藤雄基氏は,準線形常微分方程式の初期値問題の解についての新しい比較定理を示し,それにより,p-Laplace作用素を持つ非線形楕円型偏微分方程式の境界値問題に対し,球対称な正値解の一意性を示した.また,Emden-Fowlerタイプの非線形楕円型偏微分方程式のDirichlet型境界値問題および全域解の問題に対する球対称解の存在も示した.研究代表者はp-Laplace方程式を特別な場合として含む退化型非線形楕円型偏微分方程式に関するポテンシャル論について既存の理論の詳細な検討を行い,その拡張を試みたほか,そのような非線形方程式に対する優調和-劣調和関数に関する極値的長さを用いた新しいタイプの比較定理を与えた.
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