研究概要 |
十年以上前から、破壊現象の数理解析を行い、準静的線形破壊力学については数理的枠組みを作ることができた。とくに、申請者の提案した一般J積分の概念により、準静的破壊現象を統一的に捉えることの可能性が示されている。 今回の科学研究補助金を用い、広島大学の大学院生に手伝ってもらい、破壊力学関連の研究状況を調査した。その副産物として、ル-マニアの数学者Constantinescu,-A.-A.の1990年の論文において、申請者の初期の研究が発展させられていることが分かった(American Math.Review.♯92i:73075)。 上記に述べた一般論を具体的に適用するには、亀裂先端の弾性場の構造を知る必要がある。とくに、弾性場の特異項の係数であるK値を知ることは大切である。K値は弾性体形状、負荷、亀裂形状に大域的に依存することが分かっている。今年度は、弾性体形状とK値の依存関係を表現する式を導いた。その結果を、1994年夏における数理解析研究所「弾性体方程式の数値計算とその周辺」において“Sensitivity Analysis of Stress Intensity Factors in Elasto-Static Plates"、応用数学合同研究集会において「破壊問題における物体形状に対するK値の感度解析」という題名で講演した。 今後は、基礎論理だけでなく、一般J積分の応用についてもまとめると共に、K値の物体形状、亀裂形状などにおける幾何量との関連を研究し、体系化したいと思っている。研究集会等では研究成果を発表しているが、論文としてまとめるのが非常に遅れているのが問題であると感じている。是正するよう努力したいと思っている。
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