研究概要 |
銀河や大構造形成問題に関して重要な密度ゆらぎの成長とクラスタリングのパターン形成等といった重力成長の非線形ダイナミックス等の解析を進めるとともに、銀河の形成と進化の問題に対して重要になるダ-クハロ-の成長過程,銀河力学等の解析を行った。具体的には、以下のような研究テーマで成果を得てきた。 1)擬スペクトル法による数値的解析によって、密度ゆらぎのパワースペクトルの非線形成長における異なったフーリエモード間の非線形結合の規則性を新たに得ることが出来た。 2)密度ゆらぎのパワースペクトルがベキ則になるときのベキ指数の値が2次元系や現実の3次元系の場合も、カタフトロフィー理論によって分類されている特異点のタイプによって決定されていることを明らかにした。さらに,強い非線形領域での相関関数のベキ則解に関しては,BBGKY方程式をもとに解析を行い,ベキ指数といくつかの物理量との関係を明らかにした。また,そのベキ則解の安定性についても解析した。 3) 1次元自己重力多体系での、準平衡状態への移行の時間尺度に関して、新しい規則性が得られた。さらに,準平衡状態が多数存在し,状態間を移り渡るという新しい現象を発見した。その時間尺度はベキ的であり,これは位相空間内で準平衡状態を特徴づける部分空間が,フラクタル的に分布しているためと解釈される。 4)銀河形成問題にとって重要であるダ-クハロ-の個数密度の理論的評価に関して、従来よく用いられているPress-Schechter形式の適用限界について明らかにした。また,ダ-クハロ-の形成史の解析に対しても,空間相関の効果が重要であることを,いくつかのモデルと我々の解析的評価を比較することにより示した。 5)銀河の固有速度によって、ハッブル定数が我々が観測する局所的な値と、実際の宇宙全体の大局的な値とでどの程度差があるかを宇宙背景輻射の異方性からの制限も考慮して理論的に評価した。
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