先ず、南部・Jona-Lasinio模型の枠組みで、相対論的な三クォークのFaddeev方程式を解くことによって、核子とデルタ粒子に対する波動関数及び固有値(質量)を求めた。そして、核子、デルタ粒子とパイオンの質量を同時に再現できるような相互作用lagrangianを構成することに成功した。そのlagrangianは、グルオンの自由度を反映する4フェルミ・色カレント型で、軸性カレント型の補正項を含む。この結果は、今年のNuclear Physics誌に掲載される予定である。 次にFaddeev方程式の解である核子の波動関数を使って、核子と外場との相互作用を研究し、核子の内部構造に関する情報を得ることができた。その仕事についての論文をPhysical Review Cに投稿した。主な結果は次の通りである:この模型では、核子のスピンの大部分(80%)はクォークのスピンから生じる。従って、Faddeevの方法に基づいた核子の描像はコンスティチュエント・クォーク模型での描像に近いと思われる。ただ、ここで得られたスピン成分の値は、最近のレプトン・核子深非弾性散乱の解析から得られた値(31%)より大きい。それに対して、核子の軸性結合定数は、実験値に近い値が得られた。また、核子中のクォーク凝縮を計算することによって、パイオン・核子散乱におけるシグマ項及び中性子・陽子の質量の差が分かる。パイオン・核子のシグマ項の結果は実験値をよく再現するが、中性子・陽子の質量の差は実験値と比べて大きすぎた。その原因は現在検討中である。また、外場によって核子に運動量が持ち込まれる場合に、三クォーク波動関数のLorentz boostを導入した。現在、この効果を含む核子の磁気能率及び電荷分布の半径の計算を進めている。 さらに、すでに求めたFaddeevの波動関数を、フォック空間で展開する方法を最近定式化した。この方法を用いて、基底状態中のフォーク・反フォークの重みを計算する予定である。そうすることによって、従来よく使われていた核子のソリトン描像とFaddeevの方法との関連を明かにしたい。
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