研究概要 |
本研究では、弦理論の基本原理の解明に、Batalin-Vilkovisky形式を基礎にした方法で取り組むことを目標とした。この方向への第一歩として、私は以前の論文で、弦の場の理論の作用S(Φ)(Φは弦場)を、経路積分されるべき力学変数に格上げし、『作用の作用』I(S)で記述される理論“Theory of Theories"(以下TTと略す)を提案した。このTTが、はたして弦理論の基本定式化足りうるかを調べるために、本研究ではまずTTにおける観測可能量の構成を試みた。この観測可能量は、Batalin-Vilkovisky形式のデルタ演算子Δに対して、ΔD=^∃D_LΔおよびDΔ=Δ^∃D_Rを満足するようなD=D(Φ,∂/∂Φ)を用いて、Ο=∫DΦDexpS(Φ)と与えられることがわかる。最初、この問題を数学的に簡単に扱うために、Φ[X^μ(σ),・・・]=Φ_Iというように、弦座標(X^μ(σ),・・・)を離散的に扱ったが、この場合は条件を満足するDは存在しないことがわかった。しかし最近、(X^μ(σ),・・・)が連続であることを陽に用いる事により、条件を満足するようなDをいくつか構成することに成功した。現在、そのようなDを系統的に構成する一般論を展開しようとしているところであり、完成し次第、論文として発表する予定である。また、弦理論の基本原理の解明との関係は薄いが、TTと同様に位相的である場の理論を用いて、Yang-Mills理論の高温におけるdeconfining transitionのメカニズムの解明を行った。この位相的場の理論は、BRST量子化を行ったYang-Mills理論において、ゲージ場A_μを純ゲージ配位A_μ=g^†∂_μgに制限して得られるものであり、本来のYang-Mills理論のゲージの揺らぎだけを抽出したtoy modelである。このモデルを有限温度で解析することにより、カラー閉じ込めを実現していたgの大きな量子揺らぎが、充分高温では無くなって、deconfining transitionが起きることがわかった。この結果はProgress of Theoretical Physicsに近日掲載予定である。
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