研究概要 |
本研究は、素粒子物理の基本法則を支配しているゲージ対称性の起源をさぐる目的で始められた。一般には、高エネルギー(Planckエネルギー)領域で極めて高い対称性が原理として要求され、それが低エネルギー領域でその対称性が自発的に破れを起し、4次元空間では我々の知る対称性を生み出していると考えられている。この時に機構はカルツア・クライン機構であるが、我々はそれに加えてBerry位相機構も働き、通常考えられているより複雑なゲージ対称性を生み出す可能性を検討してきた。 H6年度には、6次元時空が4次元ミンコフスキー空間と2次元リーマン面に、カルツア・クライン機構によってコンパクト化した場合に、その機構で予想されるゲージ対称性のほかに、Berry位相機構によって余分の力学的ゲージ場が出現する機構を具体的に作成した。 H7には、その出現機構が働く場合、ゲージ場がコンパクト化したリーマン面上で、どのように波動関数が定義されていなければならないかを解明した。答えは、リーマン面をおおう単連結な各パッチk(k=1,2,...)の上で定義され、そのパッチ接続部上でゲージ変換で継ぎ合わされていなければならない。誘導されたゲージ場はもとのU(I)ゲージ場の5〜6次元成分がその自由度をになうことになる。 この研究の過程で、宇宙を含むすべての相互作用をもつ統一理論のミニ模型として、通常の弦模型を2次元時空宇宙模型として解釈して直すと、非常に興味深い結論が得られることに気付いた。ここでは、宇宙は分岐、融合を繰り返し、分岐した島宇宙は安定した状態で存在し得る。これは量子宇宙論とその古典的極限の関係を検討する良い具体例になっている。
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