研究概要 |
今年度の研究は、交付申請書に記載した「研究目的・研究実施計画」にそって行われ、具体的には次の様な成果が得られた: 1.以前より高次元ゲージ理論におけるCPの破れの問題を議論して来たが、今年度は、オ-ビフォールドにコンパクト化したsuperstring理論においてのCP対称性について、小林達夫氏(在ドイツ)との共同研究によって調べた。高次元理論においては、CP変換はコンパクト化する空間についての一種のパリティー変換(orientation changing operator)である事を示し、オ-ビフォールドを特徴づけるlattice vectorsは容易にこうした"パリティー"不変性を持つためにCPの破れを得ることがむずかしい、との予想を立てた。実際には、"wilson line"の寄与がnon-trivialであるが、適当な鏡映変換の軸を選ぶことによりCP対称性が、調べたモデルにおいては常に存在し、CPを破ることがむずかしいという新しい知見が得られた。Physics Letters Bにpublishされた。 2.太陽ニュートリノを観測している3つのタイプの実験は、それぞれ異なったcapture ratesを報告しており、これらを同時に理論的に説明することはむずかしいと思われていたが、Resonant Spin-Flavor Precessionシナリオで期待される太陽ニュートリノのエネルギースペクトルは、ちょうど3つのタイプの実験データを同時に説明するために望ましい形をしている事が議論され、MSWシナリオにおけるより、より広いパラメーター空間でデータを説明することが出来るという知見が得られた。Astroparticle Physicsにpublishされる予定である。 3.新粒子のゲージボゾン3点関数に対するnon-decoupling効果について、それらを記述する4つのパラメーターとS,T,Uパラメーターとの関係、non-linear σモデルを用いたoperator解析との関係などが調べられた。プレプリントを作成中である。
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