研究概要 |
本研究では,次に3つの点について以下の成果を得た。 (1)散乱断面積の自動計算システムの超対称性理論への拡張を行った。この際に問題となったのは,マヨラナ粒子の存在である。この,マヨラナ粒子が関与することにより,標準理論では起こらなかったフェルミ粒子数の保存則が破れる過程が現れてくる。また,ディラック粒子同士の相互作用の中に直接フェルミ粒子数の保存則を破るものも含まれている。そこで,これらの新しく現れてきた粒子や相互作用の寄与する中間状態に対するグラフ生成及び散乱振幅を構成する一般的手法の開発を行った。更に,荷電共役行列を含む頂点部分の振幅を数値的に処理する方法を開発した。 (2)次に,自動計算システムを電子-陽子散乱過程に拡張する手法を検討した。陽子は数種類のクォークとグル-オン(パートン)の複合粒子と考えることができるので,始状態に陽子と電子を指定し,終状態の粒子と摂動の次数を指定しても,素過程の始状態には一般に複数のパートンが寄与する。しかも,指定された終状態によって始状態で寄与するパートンが異なってくる。そこで,反応に寄与する素過程を選び出し,それらの複数の素過程を全て生成して,その重ねあわせとして反応断面積を自動計算するアルゴリズムのテスト版を作成した。 (3)電子-陽子散乱過程のようなハドロンが始状態にある反応過程の理論的に解析に必要な,始状態のハドロン内にあるパートンに対する量子色力学(QCD)による多粒子生成やパートン分布のスケーリング則の破れを取り扱う一般的な手法の再検討を行った。特に,始状態のパートンの全粒子数がエネルギースケールに依存するフレーバーシングレット項の生成アルゴリズムの検討を行い,従来の方法と異なる新しい試みとして,パートンの運動量分布のエネルギー発展を用いてパートンカスケード現象を再現するアルゴリズムを構成し、従来の方法との比較検討を行った。
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