研究概要 |
閉じた多様体上での量子化および量子論の問題は、これまで僅かにDiracによる正準形式の拡張に基づく研究があるのみで、より基本的な研究は最近Landsman-Lindenおよびわれわれにより独立のアイディアのもとに展開された。この種の量子化には、ゲージ構造が自動的に内包されているという注目すべき性質があることがこれらの研究で示され、特に、われわれはD次元球面上の量子化において誘発されるゲージ場の具体的な形を導いた。これに基づき、この際のゲージ場の数学的な性質をほぼ完全に解明することができた。結果は次の通りである。 1.得られたゲージポテンシャルはそのときの次元Dをもつ球面上のYang-Mills方程式の解になっている。 2.D=1およびD=2n(n=1,2,・・・)ではゲージポテンシャルはトポロジカルに非自明になり、D=1ではAharonov-Bohm型ゲージポテンシャル、D=2は単磁極子のゲージポテンシャル、D=4はインスタントン解、またD=6,8,10,・・・ではFujiiの一般化インスタントンとなる。とくにD=4pのときは双対(反双対)関係が定義される。3.D=2n+1(n=1,2,・・・)ではゲージポテンシャルはトポロジカルに自明になる。 興味のあることは、以上によってD次元球面上のYang-Mills方程式のトポロジカルに非自明な既知の解が本質的に尽くされていること、しかもそれが解析的でなく代数的な手法で導かれた点である。これがどの程度一般的なものなのか、数学的にも興味のある問題で、海外の国際会議でも発表し種々関心を集めることができた。これと関連し、グラスマン多様体U(n+m)/U(n)×U(m)上の量子化の際に誘発れるゲージポテンシャルを導いた。これまでここでのYang-Mills方程式の解は、Donaldsonにより解析的な手法で特別なn,mにおいて求められているにすぎない。われわれの得た一般の場合の解に関し、その数学的性質の全貌解明の作業は目下進行中である。
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