研究概要 |
●CsPbCl_3の3次弾性率について 超音波測定に使うのに十分な大きさの単結晶CsPbCl_3をStockbarger法により作成し、良質で十分な大きさの単結晶が得られた。この試料について,相転移点をはさんで超音波測定を行い,三次弾性率の詳細な温度変化を調べた。その結果,結晶構造が立方相から正方相に変化する臨界領域で,三次弾性率の発散的増大が観測された。 この結果、CsPbCl_3では普通の結晶に比べ室温付近での、格子振動にともなう原子変位が極端に大きく、著しい柔軟性を示すことが分かった。また,CsPbCl_3のような原子振動の振幅の大きな物質では、いわゆる線形固体とよばれる普通の結晶に比べて、弾性的性質に非線形効果の影響が顕著に現れることが分かった。 本研究で測定された三次弾性率は、結晶の非調和性を表す量として重要であるが、二次弾性率と比べ測定が複雑であるなどの理由で、いままで、三次弾性率の温度依存性などについての理論的・実験的な研究はあまり進んでいなかったが、本研究の結果,ランダウの相転移理論で、普通、定数と仮定される三次係数が現実の系では、顕著な温度変化を示すこともありうることが明らかになった。
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