研究概要 |
結晶内原子の異常散乱因子は、吸収端近傍でXANESやEXAFSが現れるように、固体の結合効果の影響から自由原子モデルの理論計算とは異なる。そして、その相違は、実験上の困難さから、現在のところ明確な実験データが不足している。当研究の目的は、Si,Ge,GaSs,GaSb,InP,InSbなどの半導体結晶やCuのひげ結晶を用いて吸収端近傍のX線共鳴散乱によるペンデルビート(PBXRS)の測定から異常散乱因子を求め、理論計算と比較、検討することである。 この研究を始めるに当たり、PBXRSが最も顕著に観測できる条件を吸収を考慮した動力学理論を用いて理論的に考察した。その結果、実験が行い易い10keV付近に吸収端があるGeの420,440,620,844反射,GaAsの200,420,600反射が有力であることが分かった。次に、当研究で使用するエネルギー分散型計測システムを作成した。また、吸収端近傍を精度よく測定するための微少回転機構(最小角度ステップ0.02秒)を4円回折計のφ軸上に作製した。実験は、KEK-PFのシンクロトロン放射光とBL-6Clステーションに設置してあるSSD付き汎用4円回折計及び当研究で作製した微小回転機構と計測システムを使用して行った。試料は、EPDが500個cm^<-2>以下のGaAsである。GaAs試料は、厚さを209.0、219.8、224.2、232.2、234.0μmの平行平板状に加工し、200反射のPBXRSの観測を試みた。測定は、Ga K吸収端近傍を0.42eVステップで行い、プロファイルフィッティング法でデータ解析を行った。その結果、当研究で求めたGaの異常散乱因子の実数部f'_<Ga>は、Parratt&HempsteadやCromer&Libermanの方法による理論計算値に比べて吸収端から-50eVで2〜6%小さく、-5eVで9〜13%小さくなることが分かった。
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