研究概要 |
六方晶ABX_3型反強磁性体は遷移金属元素Bがc面上で三角格子を構成する擬一次元反強磁性であるために、スピン秩序化過程でスピンフラストレーションに起因する多種の逐次磁気相転移が現われる。したがって構造特に強誘電相転移による三角格子の歪みはABX_3型の磁気相転移機構に重大な影響を与えるので、この系の構造相転移の研究は磁気相転移の性質を調べる上でも重要である。本研究はABX_3型化合物中のRbFeBr_3,KNiCl_3,RbMnBr_3,RbVBr_3,RbCoBr_3の構造相転移を中心とした実験研究を進め下記の知見を得た。 1.RbFeBr_3とRbVBr_3には新しい構造相転移が、それぞれ、39.5Kと186.6Kにあることを誘電率等の測定で明かにした。RbFeBr_3は39.5K以下の低温領域で強誘電相転移を起こし50Hzの強誘電履歴曲線が観測できる物質として貴重である。またこの結晶には磁気転移T_<N1>=5.5K以下の温度領域で強誘電性と反強磁性が共存する可能性があるので、電気分極を制御することにより磁気相転移機構の知見を得ることが可能であることを示唆する。 2.KNiCl_3およびRbMnBr_3は類似した逐次構造相転移をし、それぞれの磁気相転移点より高温で強誘電性を示すこと発見し、相転移機構は八面晶BX_6の作る一次元鎖のシフトで解釈できる。 3.RbVBr_3の構造相転移点(T_C=90K)以下の結晶対称性を焦電荷の実験等から無極性の六方晶P3c1と結論した。この転移点では発散的な誘電率の異常はなく温度降下ともに増大し量子常誘電的振る舞いの傾向を示すが、磁気相転移の発生のために誘電率の増加は抑制されることがわっかた。誘電率の実数・虚数部および熱膨張は磁気相転移で明瞭な異常を生じ、スピン秩序化過程の解釈に重要なデータである。 4.RbCoBr_3の誘電率は従来報告されている磁気相転移点(T_<N1>=36K)の他にT_<N2>=11Kでλタイプの鋭い発散を測定した。この異常は磁気相転移に対応するものと考えられ、ABX_3型反強磁性体の磁気相転移機構の解明に誘電率が今後非常に期待される。また90Kに構造相転移があることも初めて見い出している。
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