研究課題/領域番号 |
06640469
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 逹生 (長谷川 達生) 東京大学, 教養学部, 助手 (00242016)
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研究分担者 |
鹿児島 誠一 東京大学, 教養学部, 教授 (30114432)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1995年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
1994年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 分子性伝導体 / 有機電荷移動錯体 / BEDT-TTF / TCNQ誘導体 / バンド・フィリング / 反強磁性 / スピン・電荷複合物性 / フィリング制御 / 電荷移動錯体 / 反強磁性相 |
研究概要 |
本研究の目的は、数多くの二次元伝導層を形成するBEDT-TTF(以下、ET)分子を用いた、新しいタイプの物質の設計と開発を通じ、ET系におけるバンドフィリングの制御、スピン電荷複合物性等による新たな電子相発現の可能性を探索しようとするものである。以下、本研究で得られた研究実績の概要をまとめる。 ・ET(及びその類緑体:BMDT-TTF、BEDO-TTF、TMTSF等)と多数の有機アクセプター分子を組み合わせた二成分有機電荷移動錯体の合成に成功し、数多くの特異な金属的錯体を得ることに成功: ドナーとアクセプターの両者が物性に寄与し得る二成分有機電荷移動錯体は、バンドフィリングの制御、スピン電荷複合物性等が期待できる。我々は、アクセプター分子としてF_1TCNQ、F_2TCNQ、Me_2TCNQ、ClMeTCNQ、BrMeTANQ、Cl_2TCNQ、Br_2TCNQ等のTCNQ誘導体を開発し、これらとET(及びその類縁体:BMDT-TTF、BEDO-TTF、TMTSF等)を組み合わせた電荷移動錯体を合成し、多数の電気伝導性錯体(10種類)、興味ある磁性錯体(4種類)を得た。 上記得られた錯体について、電気伝導性、磁気特性、及び単結晶偏光反射スペクトルの測定を行った。 ・(ET)(F_1TCNQ)の特異な金属状態:本研究により得た(ET)(F_1TCNQ)は、低温(〜2K)まで金属的な挙動を示したが、これは低温まで金属的なはじめての二成分電荷移動錯体である。しかし、その帯磁率は単純なパウリ常磁性的なものではなく、温度低下とともに増大するキュリー常磁性的な成分を持つ。また反射スペクトルの測定から、プラズマエネルギーを3300cm^<-1>と見積もった。これは通常のET塩の値に比べ1/2〜1/3程度の値しかない。 ・(ET)(F_2TCNQ)の反強磁性転移の起源:(ET)(F_2TCNQ)は反強磁性転移する非常に珍しい交互積層錯体である。偏光反射スペクトルの測定から、積層カラム間の電荷移動励起子吸収が明瞭に観測され、この系では通常の交互積層型錯体と異なり、カラム間の相互作用がカラム内のそれに比べ圧倒的に強いことが分かった。反強磁性転移の起源はこれによる陰イオンラジカル間の三次元的相互作用による。 ET系ドナーを用いた二成分電荷移動錯体では、ETによるカラム間相互作用によってパイエルス的な比磁性絶縁相が抑制され、またアクセプターがラジカルスピンを持つことにより興味ある金属状態、磁気的状態が実現されることが明らかになった。さらに、この系はアクセプターの化学修飾によりその物性を系統的に変化させることが可能で、その魅力は物性物理の対象として極めて大きく、本研究によりこの様な未開拓の領域を研究する端緒を得たといえる。
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