研究課題/領域番号 |
06640470
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
澤 博 東京大学, 物性研究所, 助手 (50215901)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1994年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 分子性伝導体 / 金属-絶縁体転移 / リエントラント転移 / DCNQI / 低温構造 / 反強磁性体 / 一次相転移 |
研究概要 |
本研究で取り上げた分子性伝導体(DCNQI)_2Cuについての研究は現在も進行中であるが、本年度の研究では極めて興味深い結果が得られた。この系における特徴的な圧力-温度の相図がDCNQI分子とCuとの間の電荷移動量によって理解されることが、Cu siteへの置換効果による研究から明らかとなった。圧力と電荷移動の関係をつなぐ鍵となるのがCuの配位角である。圧力によりこの配位角が変化し、これによる結晶場の変化がdのレベルと一次元バンドとの相対位置を変化させ電化移動が生じるというシナリオを我々は提案した。従って、このモデルの正当性を調べるために選択的に重水素化した一連の(DMe-DCNQI)_2Cuの低温構造を調べることは極めて重要な研究である。また、重水素置換した(DMe-DCNQI)_2Cuは比較的大型の単結晶ができることと、水素による非弾性散乱が除去できるため中性子回析の実験に適しており、懸案となっている絶縁相での反強磁性の磁気構造を詳細に決定することができると考えている。 まず、結晶作成についてであるが、DMe-DCNQI分子の8個の水素を選択的に重水素で置換したDMe-DCNQI-d_nを合成した。合成法についての詳細は論文にて発表した。これらを用いて拡散法で得た単結晶を用いてX線による低温構造解析と中性子回折実験を行っている。 まず、X線による低温構造解析は、イメージングプレートとHeガスの冷凍機の組み合わせで行った。これにより、(DMe-DCNQI-d_7)_2Cuにおける金属-絶縁体転移の前後での体積変化が極めて精度よく測定され、金属相と絶縁相での平均構造の解析を行うことに成功した。これによると、Cuの配位角が転移点で不連続に変化していることがわかり、先のモデルをこの結果は支持している。この系特有のリエントラント(金属-絶縁体-金属)転移を生じる重水素置換体(DMe-DCNQI-d_2)_2Cuの低温構造については現在実験を行っている。 中性子回折実験については、(DMe-DCNQI-d_7)_2Cuの単結晶による予備的な実験を行った。絶縁相での反強磁性構造を決定するために約0.8mgの単結晶を用いて1.5〜10Kでの測定を行ったが、核散乱に対して磁気散乱の強度が小さいために有為なシグナルが得られなかった。現在この結果を元に、更に大きなサイズの単結晶を作成している。
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