研究概要 |
Cu酸化物高温超伝導体の超伝導性はCu(3d^9)-О(3p^6)の電子状態に起因しており,超伝導性の起源について理解を進めるためには、異方性の低いCu硫化物超伝導体のCu(3d^9)-S(3p^6)結合軌道にかかわる基礎物性の解明が望まれる.本研究グループは,おおくのスピネル型Cu硫化物超伝導体の開発と研究を進め,Cu_<1+X>Co_<2-X>S_4(x=0-0.5)系では,Co^<3+>(3d^6)がlow spin状態にあり,Cuによる反強磁性(20K)と超伝導性への転移(5K)を発見したので,研究の中心をCu_<1+X>Co_<2-X>S_4系の問題と関連する物質と物性を解明することに置いた.再現性のある試料合成方法を確立するのに多大の労力を必要とし,初期の研究計画が1年遅れることになった.実際,このユニークな物質は,発見以来7年を経た現在でも,合成できるのは世界的にも我々のグループだけである.試料の性質を制御できた結果,分散気味であった磁性や超伝導性に関する実験結果を定量的に把握することが出来るようになった. 本計画では,試料の合成方法の確立,結晶学的パラメターの整理,電気伝導性,超伝導性の基本性質,NMRによるミクロな研究を進めた.試料の合成と基礎物性の研究は愛媛大学で遂行し,低温実験の一部を東大物性研究所,NMRによる一次実験を徳島大学工学部のグループ,および,NMRによる更に詳しい研究を神戸大学理学部のグループと共同研究を進めることによって多くの成果を挙げることが出来た.その結果.初期に予想した,Cu(3d)-S系の超伝導性,スピン相関と電子相関に関する多くの有用な現象が明らかになり,今までに,関連する主要論文として,合計12報の研究論文を報告した. 現在,低温比熱,中性子回折,熱電能,高圧効果の研究も進行中であり,更に重要な成果が得られつつあるので,引き続き研究課題として取り組んでいく予定である.
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